「セブン(デイビットフィンチャー)」の感想

セブン(映画)

ゴールデンウィーク期間、久々に仕事のチャットやメールが1日10件以下という日々が続き、のんびりと時間をとって映画を見たりしている。そこで毎月お金だけ払い続けてぜんぜん活用できていないネットフリックスやアマゾンプライムなどを巡回し、前々からずっと気になっていた作品をいくつか見た。その中の一つにデイビットフィンチャーの初期作品「セブン」があった。あまりにも有名すぎて見ていなかった作品だ(こういうが山ほどある)。

見終わった後のいくつか気になった点があったので、これまた久しぶりに感想サイトをネットで調べてみようかと、グーグルで「セブン 感想」や「セブン ネタばれ感想」などと調べてみるのだが・・・まともな感想サイトが見つからない。アフィリエイトサイトばかりで・・・熱い、煮えたぎるような感想サイトは死滅していたのだった。

映画好きのアルパカに聞いたサイト「みんなのシネマレビュー」というサイトの感想が充実していたので、ざーっと眺めてみるのだが、大体が「衝撃のラスト」や「七つの大罪」に関してのコメントばかりで、僕が気になった部分を触れている人はいない。

以下、ネタばれを含みながら、(熱い煮えたぎるような感想ではないが)僕なりの感じたこと、思ったことをメモ。

サイコサスペンスはサイコサスペンスなんだけど、ものすごい尖った世紀の大犯罪でもなく、テーマに沿った異常者の犯罪が特殊で目立つわけでもなく、今回の事件も、ただただ日常的な犯罪の域を出ないという示唆こそが、このセブンでもっとも作者が伝えたかった事じゃないのだろうか。その部分を伝えている箇所が、事件の合間に挟まる2人の会話などで表現されている。ストーリーのあちあこちらに散りばめられている。以下、その伏線かなぁと思った箇所。

① 序盤にサマセット(モーガン・フリーマン)と上司との会話で「定年後はどうするんだ」「畑を耕し、家を修理するさ」「寂しいと思わないか?刑事を辞めるんだよ」「うれしいよ」「刑事は君の天職で辞められんさ」「犬の散歩中に男が襲われた。財布と時計を奪われ道に倒れていたら、両目をナイフで刺された。昨日起こった事件だ。私には理解できない」「ずっとこうだ」「確かに」と話している。日常的に理解のできない犯罪が多く起きており、サマセットと上司は諦観したような表情をするのである。

② 二人目の被害者を部屋から指紋が出てきて、その照合を待っている間の二人の会話のシーンでも「犯人を捕まえなくて何をする?」「捜査だ。勝書類を集め、万が一の裁判に備える。救助されたら役に立つように無人島でダイヤ集めだ」と猟奇的な殺人事件を追いかけていて熱くなっている新人刑事のミルズ(ブラッドピット)と単に一つの事件(仕事)として考えているサマセット。

③ ミルズとサマセットが車で移動中に銃は撃ったことがことがあるかという話になり、ミルズは新人時代のことを話す。ミルズは人生で最初で最後の発砲し、おまけに同僚も死んでいる。衝撃的な話であるはずなのに、ミルズは目の前で死んだ同僚の名前を思い出せない。

④ 取り調べの最中。娼婦の店番をしている男にミルズが「仕事は楽しいか?あんなところで」「いいや、楽しくない。でも、それが人生だろ」

⑤ ミルズとサマセットがバーで飲んでいる時「本物悪魔だったら納得だろう。でも悪魔ではなく、人間だ」と異常者の異常な殺人という理解の範疇外ではないことを伝えている。

⑥ 最後のジョン・ドゥ(ケヴィン・スペーシー)との車での会話でミルズが「せいぜいワイドショーのネタだ」と言い放つ。

⑦ 定期的に映画全体で「狂った犯罪者の仕業」というようなフレーズが出てくる。また犯人自身も「私が異常者なら安心か?」と聞いている。実際ははた目から見れば、狂った犯罪者だったのだが、作中ではあえて犯人の動機など深堀りしていない。

⑧ 最後のシーン。パトカーで連行されるミルズを見送って、疲れ切ったサマセットに上司は声をかけると「ill be allright (なんとかするさ)」と映画は締めくくられる。

⑨ 7つの大罪をテーマにして、1年前からきっちりと計画していた犯罪なのに、ジョン・ドゥは途中で殺人計画を変更した結果、中途半端なものになってしまっている(「憤怒」が処理しきれていない)。

7つの大罪をテーマにしたサイコな殺人方法に目が行きがちだが、そこよりも全体を覆っている「暗い不幸な街の日常の事件」感がこの映画の怖いところであり、見どころなんだと思う。ミルズの奥さんが「こんな嫌な街で子供を産みたくない」と言っているシーンや雨で陰鬱とした映像が多いのが、この映画の良さだ。

最後のシーンは衝撃的だが、それをさらに印象付けたのは周りの雰囲気だろう。ずっと雨で暗いシーンが多かったのに、最後だけはやけにカラっと晴れた荒野のシーンだ。ずっと陰鬱だった映画が最後は明るい場所で、犯人と対峙してハッピーエンドになると思いきや、真っ暗な夜のシーンでサマセットが「ヘミングウェイはこう書いている。『世の中は美しい、戦う価値がある』後半の部分には賛成だ」といって終わるのだ。

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